自転車百哩走大王
大王ノボリ旗駅伝
  

第3区 浜松〜名古屋 
 
 
大王旗駅伝第3区浜松〜名古屋--- 成瀬 徹(No79)

11月21日は休日出勤だ、翌22日を振替休日にして大王駅伝第3区を走破する事にした。昨年の名古屋浜松は高校時代に走った東京までの道程の一部をたどった懐かしいものだった。

 
回も物見遊山優先で山奥サイクリスト待望の「海沿いコース」。まず浜松から太平洋沿いを西に向かい、渥美半島伊良湖岬に出てフェリーで知多半島師崎に渡り、伊勢湾沿いを北上して中部新国際空港を望み、名古屋に至る156kmのコースを考えた。21日は高山を最終の列車で発ち、浜名湖の東岸にある同級生宅で1泊して22日の早朝に出発するつもりだ。
 
 
て、いよいよ21日。職場から駅に直接向かうつもりで机の上を片づけていると一本の電話、トラブル発生。まさに「帰りがけ、取らなきゃよかったその電話」。結局最終列車を乗り過ごしていきなり予定変更、ナイトラン覚悟で22日朝一番の列車で浜松に向かうことになった。

 
休の合間とはいえ22日は平日だ。高山あたりでは早朝という事もあり乗降客もそれほどでもないが、どんどん南下して都市部に近づくと通勤時間帯にかかり乗降客も多く、車内はほぼ満員。できるだけ邪魔にならない場所に自転車を置いたつもりだがこれだけ人が多いとどうしようもない。

 岐阜で本数の多い東海道線に乗り換えると車内は一段落、名古屋を過ぎると車内は余裕たっぷり。10時前にようやく浜松に着き駅のうどん屋で腹ごしらえだ。

 10時半、前回のゴール地点で今度はスタートの写真を撮って一路名古屋を目指す。ストレスの多い国道1号を避けて県道の雄踏街道を西に向かうがさすがに平日なので大型車の通行が多い。

 季節風を覚悟していたがわずかな向かい風で穏やかな晴天、久々の浜名湖は初冬の陽光を穏やかにはね返し銀色に染まっている。そんな穏やかさとは裏腹な事件が発生してしまった。

 何となく調子が悪いと思っていたリアディレイラーが突然動かなくなってしまった。メンテの時に古いグリスを全部落として再びグリスアップしたのがいけなかったのか?ワイヤーがおかしいのか?とにかく原因はわからない。

 
方がないので手持ちの工具でバラバラにして再度組み立てると何事もなかったように元に戻った。このトラブルで1時間以上ロスし、伊良湖岬発のフェリーを一本遅くしなければならなくなったのだが、そうすると今度は高山行きの最終列車に間に合わない。23日は仕事が入っているのでどうしても今日中に高山に着かないとマズイ。

 ここは涙をのんで太平洋伊勢湾周遊コースをあきらめ、三河湾周遊130kmのコースに変更するしかないが、まだ分岐点の手前でトラブルが発生したので助かった。浜名湖太平洋に別れを告げ旧東海道へ車輪を進め豊橋へ向かう。

 旧東海道はマイナーな県道なので路面は悪いが交通量もそれほどでもなくずいぶん走りやすい、浜松名古屋間は意識して山を目指さない限りほぼフラットな道程が続く、その中にあって唯一アップダウンが続くのが愛知静岡の県境、山が目前に迫り照葉樹林の輝く緑や山の懐の奇岩が出迎えてくれる。

 愛知県に入れば山の緑とも別れ、雑多な豊橋市内に入る。普段人家がまばらでクマが出るような田舎道ばかり走っているので馴れない街中の道はとても気疲れする。それでもできるだけ交通量の少なそうな信号の少なそうな道を選んでいるのだ。

 豊橋からはいずれも幹線で交通量がハンパではない1号線23号線を行かねばならない、1号線は所々旧東海道など裏道にエスケープできるが景色が楽しくない。23号は海沿いの幹線なので裏道は期待できないが景色が楽しめる。山男は海が恋しいので前回も走った23号線をチョイスした。

 さすがに平日は大型車が多く車道はコワイ、2車線の区間はできるだけ歩道を走るようにする。海が近づき4車線になるとようやく景色を楽しみながら快適な走りができるようになった。蒲郡からは旧道を走り、前回同様竹島で記念写真を撮る。

 
て、ここからがコースの思案どころ、岡崎回りでは前回と同じルートで面白くない。かといってここから先の23号は工業地帯を走り抜けるバイパスとなるので大型車の走行が激しくなる事必至。

 あれこれ思案していると「トヨタ街道」を思い出した。世界のトヨタを支える関連会社が道沿いに点在する県道だ。当然「カンバン方式」をとるトヨタなので大型輸送車の通行も多いが、トヨタ関連の輸送車はものすごく運転マナーが良いので同じ大型車でも安心して走る事ができるのだ。

 思ったとおり大型車はずいぶん余裕を持ってスルーしてくれるし対向車があっても決して後ろからあおるような付き方はしない。さすがに世界を目指す自動車メーカー関連だけに交通弱者との共存やマナーが徹底されているようだ。

 
のあたりは世界に名だたる大会社と日本のデンマークといわれるような愛知県の穀倉地帯が混在するおもしろい所だ。だから道はひたすら田んぼの中、時々併走する新幹線が唯一の慰めである。2歳の息子が新幹線に夢中でビデオや本が溢れているので親まで車両を覚えてしまい「おお500系だ」とか「今年が最後の100系じゃん」などとついつぶやいてしまう。

 この調子で幸田から岡崎安城刈谷を抜け大府に着いた頃には太陽は大きく西にかたむきいよいよナイトランの準備にかかる。大高に着く頃には完全に夜の帳が降りた。このあたりに次区間走者渡邊氏の自宅があるので「今第3区を走ってますよ」と報告しに行きたいのも山々だが本日は平日なので仕事に励んでおられる事でしょう。

 名古屋市内のナイトランは安全を考慮して歩道を走ることにした。ここまで快調に走ってきたがちょうど帰宅タイムにさしかかり、歩道といえど大ラッシュ。無灯火で無謀な運転をする自転車や歩行者を巧みに避けながらママチャリ並みの速度で走る。

 閉口するのは歩道に敷かれたブロック板。固いロードバイクにはこの振動がとてもきつく、手のひらが痛くなってきた。耐えきれずに車道に出るとやっぱり夜間の車道は恐怖以外の何者でもない。

 
うやく熱田神宮が見えてくる、ここまで来れば土地勘はバッチリ。走りやすい裏道をたどって東海道線のガード横を走る。ブルーの住友生命ビルが名古屋駅への南側の入り口、人通りが激しくなりいよいよ自転車を降りて歩道をひいて歩く。

 名鉄前のナナちゃんを越えるとセントラルタワーがそびえる。クリスマスのイルミネーションが輝く名古屋駅到着。災害復旧でしばらく自転車に乗っていなかったので心配だったが何とか無事完走、本当は石原氏から大王旗を受け取り渡邊氏に手渡したい所だったが、大王旗代わりに浜松で買ったウナギの蒲焼きのパックをここまで携えた。当然ながら帰路の列車の中でビールと共に私の胃袋におさまったことは言うまでもない。