自転車百哩走大王
東海中京練習会
=名古屋、岐阜でもやります
  

大王東海中京 センチュリーライド練習会
   
■  グランドファンク飛騨  ■------------------ 成瀬 徹(会員No.79)

二つの台風崩れの低気圧と秋雨前線にすっぽりと覆われた飛騨地方、天
気予報ははずれてしとしとと雨が降り寒気の影響で肌寒い。しかし、集合
場所道の駅朝日村にはすでにスタンバイを終えた渡邊氏・藤田氏・川岸氏
・斉藤元氏・兼定氏の姿があった。前日に高山入りし前夜祭を楽しんだ阿
部淳氏・岩崎氏に加え所用先から早朝駆けつけた峯尾氏、そして時折激し
く降る雨の中最寄り駅から自走してきた板東氏。
 
大王東海とはすっかりお友達の地元ナカタニサイクルクラブからは池田
氏・駒屋氏・市林氏・盛光氏・さらにナカタニサイクルさん自らサポートカー
を提供してくれる超豪華な大会になった。

スタート早々最近各方面で大活躍の渡邊やんちゃ大王が飛び出して先頭を
引っ張る。いきなりのハイペースにグループはばらけてかなりの長さになる
がサポートカーが二台体制になったので余裕で対応できる。20km地点ま
では時折急な坂が現れるもののほぼ緩やかな登りが続く、ペダルを回す
たびに木々の葉もだんだんその色を濃くしダム湖に美しいグラデーションを
映し出している。

高根第一ダムのサイトからいよいよ本格的な登りが始まる。道は細く真っ暗
なトンネルも数カ所、典型的な田舎道は走っていても楽しい。いまのところ
雨は小康状態を保ってはいるが気温が低いのが気にかかる。

高根ダムをしばらく進むと道路改修が進んだ広く快適な道が現れる、ここか
ら約10kmは絶妙な勾配が延々続く「サイレントキラーの坂」調子に乗ってい
るとじわじわと足を奪われてゆく。そんなサイレントキラー坂をものともしな
い渡邊氏は兼定氏、岩崎氏、池田氏、○○氏を引き連れて快調にとばして
いる・・・・ここでいつもと違う状況に気がつく。そう、いつも先頭をひた走る
ちゃ坊主阿部氏がグループにいないのだ。

話は前夜にさかのぼるが前夜祭会場に一通の極秘メールが届いた。「ちゃ
坊主阿部氏、ウリ坊主岩崎氏にダメージを与えよ」指令を受けた工作員は
幼稚園児2名人間遊園地作戦で体力的消耗を狙い、最終兵器のウワバミ
人妻攻撃で精神系内蔵系に大きくダメージを与えたらしい。幸いウリ坊主
岩崎氏はウワバミ人妻の難を逃れたがちゃ坊主阿部氏は明け方までアル
コールと打楽器レッスンの洗礼を受けたという情報がある。

上信越センチュリーライドの哲学の坂に勝るとも劣らない30kmの道のり
で稼いだ標高は600m、全員無事登り切りって昼食地点高根高地トレーニ
ングセンターへ到着温かい豚汁で冷えた身体を温める。

標高1200mの日和田高原は紅葉は見頃を迎え黄色や深紅に彩られた
木々の葉の織りなすグラデーションがしっとりと雨に濡れ静かな光を放って
いる。ここからは広くて快適な道沿いから紅葉はもちろん北に乗鞍岳、東
に中央アルプス、正面に御嶽山の雄大な姿と亜高山帯からの絶景が楽し
める。その代償は10kmで600mの標高を稼がねばならないGF飛騨のハ
イライトゾーンだ。今回は残念ながら雄大な大パノラマは深い雲と霧の中、
歓迎の強風と大きな雨粒が容赦なくたたきつけてくる。

30分ほど走った柳欄峠の手前で山の斜面からガサガサボキボキ大きな音
がする。何となく気になっていたが川岸氏が近づいてきたので写真を一枚
・・・・ガサガサはまだ続いている・・・音からして思うモノに間違いないのでも
う額には冷や汗がにじんできた。道沿いには結構な木が狭い間隔で並んで
いる、山の斜面上方は開けていてその奥が森になっている、状況からして
まずこちらに来ることはないと判断して木の陰からそっとのぞくと。

ビンゴ!約7メートル先に1mほどの黒い塊が草の実をたぐり寄せて食べて
いる。ちょっと異質な音をわざとたてるとピンと耳を立てて山の方へ歩き始
めた。距離20mで今度は笛を吹いてやると一度こちらを見て一目散に山へ
走っていった。はい、アナウンスどおり出没したツキノワグマ!仕事柄遭遇
は慣れているがあんまりうれしいモノではない。実はこのガサガサ事件に
川岸氏は気がついていて絶対に横を見ないように現場を一気に駆け抜け
たそうだ。

最高標高地点濁河峠は1860m、みんなで写真をと思っていたが強風にア
ラレがまじり深い霧の中、さらに気温は3度、止まって全員が揃うのを待っ
ている間に2,3人は凍死しそうだ。そのままダウンヒルに突入するが気
温3度アラレが降りしきる中でのダウンヒルは登りよりつらい、路面は名ば
かりの舗装の凹凸、細くてつづらに曲がりくねった悪路。天気がよければ
ヨーロッパアルプス的な風景が楽しめるが天気が悪けりゃただの悪路!
これが約4km濁河温泉スキー場まで続いている。口を一文字にして寡黙に
くだるメンバーが印象的。

やっとたどり着いた濁河でほぼ全員「自転車人生でこんなに辛い下りはな
かった」という顔だ。温かいコーヒーで気を取り直して再度スタート。またし
ても辛い辛いダウンヒル。ちょうど日本一過酷なフルマラソンと言われる御
嶽山スカイマラソンの最中でランナーと交錯、お互い声を掛け合うスポーツ
マンらしい美しい光景が見られる。御岳パノラマラインも今日は名ばかり
だが遙か眼下の溶岩流跡の御岳平の波を打つような紅葉や御嶽山腹の
見事なグラデーションが時折目に飛び込んでくる。

濁河で大腸の軽量化を図ったちゃ坊主阿部淳氏がここから復活した。ちゃ
坊主的おもちゃをつつきながらぐーんと先頭に出て一気に走り去る。
緩やかなアップダウンを越えて大平展望台、いきなり急坂が続く乗越峠を
越えて再びダウンヒル。下りた分は登ってもらいましょう最後の鈴蘭峠。
最後の最後にこの峠はただでさえ頭にくるのにこの峠は性格まで悪い、い
きなりの急激なつづらを登り切ると頂上に見えてしまう偽りのカーブ、もちろ
ん曲がりきった先にはまだまだ登りが続く。しかもこの偽りのカーブ、偽り
の頂上が何度も何度も登場する。天気がよければ御岳や美しい唐松林を
眺めながらぼちぼち楽しめる高原道路だがこの悪天候ではそのうち腹が
立ってくるのも頷ける。

鈴蘭高原売店からは標高600mを一気にゴールまでくだるビクトリーダウン
ロード、最高の気分で飛ばせる広くまっすぐな下りだがこの寒さでは辛い
以外の何者でないなるべくスピードを上げないようくだるのが精一杯。幸い
一人の凍死者も出さずに全員無事ゴール、一風呂浴びたあとは恒例のの
郷土料理と地酒大会、小柴氏と大王合宿にゲスト参加した富山の篠木氏
を加えゆっくり親交を深めた。

翌日は抜けるような秋の好天、高山祭り見学組と篠木氏を囲んだ峠ミニツ
アーに分かれてさらにお楽しみは続く。峠から眺める御嶽山は今年初冠雪、
実に美しくたおやかな姿を秋の空にそびえさせていた。